Post-CC OSCEとは? 試験概要と対策について解説 | 医師国家試験予備校MEDICINE

更新日:2025年7月9日
医学部の臨床実習を終えた学生が、医師として必要な基本的診療能力を備えているかを評価するのが「Post-CC OSCE」です。全国の医学部で実施されており、卒業判定や国家試験受験資格に直結する重要な試験となっています。本記事では、Post-CC OSCEの概要や出題傾向、不合格時の対応、そして効果的な対策方法までを詳しく解説します。

医師国家試験予備校MEDICINE 塾長・医師 佐々木京聖
医師。東京大学医学部卒。医学生の個別指導歴9年。大手医師国家試験予備校で、在学時より医学生の個別指導の経験を積む。基礎医学からCBT・国試対策まで幅広く手掛ける。その後、医師国家試験予備校MEDICINEを設立し現在に至る。
学生時代には、塾講師として延べ100人以上の大学受験生(主に医学部・東大志望者)も指導。東大理三をはじめ、医学部を中心に多数の合格実績。自身の勉強法をまとめた書籍に、学生時代の書籍『現役東大生が教える超コスパ勉強法』(彩図社)がある。
目次
Post-CC OSCEとは
Post-CC OSCE(Objective Structured Clinical Examination)は、Clinical Clerkship(臨床実習)を終えた医学生に対し、臨床能力を客観的・構造的に評価する試験です。「Post-CC」とは「臨床実習後」の意味で、「卒業後の医師臨床研修を開始するにあたって安心・安全な医療を提供できる能力を修得できているかを全国統一の基準で評価する」ことが目的とされています。4年次に病院実習に進むにあたって実施されるOSCEとの大いな違いは、post-CC OSCEでは臨床的な推論を行う力が求められるという点でしょう。
4年次のOSCEでは「腹部の診察」のように与えられた課題を決められた手順に従って行えば合格となりますが、Post-CC OSCEでは模擬患者に医療面接をした上で必要な診察を行い、鑑別疾患を挙げるという一連の臨床推論をこなすことが求められます。
これは、卒業後初期研修に進むにあたって必須の能力であるため、医学部ではPost-CC OSCEに合格することがが卒業要件になっています。
Post-CC OSCEの試験概要

Post-CC OSCEでは試験問題(シチュエーション)が6つ用意されています。6つのうち3つは共用試験実施評価機構(CATO)が定めた問題の中から選ばれる「共通問題」、残りの3つは各大学が独自に作成した「独自問題」になっています。
試験の流れはOSCEと基本的に同じで問題ごとに用意された教室(ステーション)を回っていく形式で、1ステーションあたり10〜15分程度試験時間があります。出題される項目は、メジャーな内科外科の疾患から比較的マイナーな疾患、採血や縫合といった手技まで多岐に渡ります。どの分野から出題されても対応できるように準備しておきましょう。
共通問題
共通問題はCATOが定める35の症候の中から3つ選んで出題されます。これらの問題の形式は基本的に全て同じで、医療面接→身体診察→症例プレゼンテーションという流れで行われます。
一つ注意したいのは、医療面接と身体診察を行える時間が合計で12分と限られているという点です。4年次の臨床実習前OSCEでは医療面接で聞くべき項目が細かく指定されており、10分ほど使ってゆっくり面接を進めることができました。しかし、post-CC OSCEでは限られた時間の中で診察まで終わらせるため、必要がある(=診断や治療に結びつく)質問をその場で判断する力が求められます。
診察までが終わるとそこから指導医(試験官)への症例プレゼンテーションに移ります。症例プレゼンテーションでは、面接、診察を通して得られた模擬患者の情報、鑑別すべき疾患、病態を根拠とともに整理して述べる必要があります。
全体を通じて、初期研修医として診療に携わることを強く意識した高度な技能が求められると言えるでしょう。
独自問題
独自問題はCATOが定める共通問題とは別で各大学が作成する問題です。詳細は大学によって違いますので、学部からのアナウンスをよく確認してください。ここでは、独自問題として出題されうる課題の例を示します。
まず独自問題に特有の課題は採血、縫合、FASTといった手技です。初期研修医としてそれらの医療行為を実際に行うことを想定し、手技そのものの中身とは別に、ラベルと患者の名前の一致、清潔な手技の実施、廃棄物の適切な分類と廃棄といった、現場で必要になる細かな点もチェックされる傾向にあるようです。
また、医療面接→身体診察→症例プレゼンテーションの流れで行われる問題もあります。共通問題と異なる点は、症例プレゼンテーションで必要な検査について聞かれたのちにCT画像などを見せられ、その場で所見を述べるよう要求されるなどディスカッション形式の問題が出されたり、薬剤の作用機序を問われたりするなどより高度な知識、思考力を問われる場合もあります。
Post-CC OSCEに不合格になったらどうなる?

不合格になった場合でも1回は再試験の機会が用意されていることが多いようです。ただし、この再試験でも不合格になってしまうと卒業要件を満たせず、自動的に留年になってしまいます。
ただ、再試験に回ってしまうとその対策に時間を再び割かなければいけなくなってしまい、国家試験やマッチングの準備が疎かになってしまう可能性も考えられます。post-CC OSCEで問われる内容は国家試験での出題と被る部分も多くありますので、早めから勉強を開始し、確実に本試験一発で合格するに越したことはないでしょう。
Post-CC OSCEの対策方法
では、Post- CC OSCEに向けてどのような対策を行っていくのが良いのでしょうか。
Post- CC OSCEでは臨床実習前OSCEのような手技の丸暗記ではなく、初対面の患者に対して適切な診察を行う柔軟性が求められます。ロールプレイのような練習を通じて臨機応変な対応力を鍛えることが必要です。
手技、診察の反復練習

Post-CC OSCEでは、患者ごとに異なる状況に臨機応変に対応する力が求められますが、その前提として必要なのが、基本的な手技や診察技術の確実な習得です。基礎が身についていない状態では、状況に応じて適切な「引き出し」を開けることができず、応用的な判断や対応もうまくいきません。
まずは、血圧測定、聴診、腹部、神経診察などの標準手技を繰り返し練習し、手順を体で覚えましょう。その際に、「なぜその手順で行う必要があるのか」という観点を持ち理解しておくこともとても大切です。
ロールプレイで練習する

一通り標準的な手技、診察技術を習得したら次はそれらを応用して用いる練習を行いましょう。友人などと、医師役と模擬患者兼指導医役を交代で行うとお互い勉強になります。模擬患者役は、ベースとなる疾患を考えた上で、医師からどんな質問をされうるか(どんな質問をするのが適切か)や、逆にどのように答えれば医師役にとって難しい問題となるかのような視点を持って状況設定を行うことで、自分の勉強にもなるはずです。
ロールプレイの後は、医師役の問診、診察は適切だったのか、指導医役に報告する内容は十分だったのか、指導医から追加で質問されるとしたらどんな点かなどをディスカッションするとお互いの勉強を深められます。
時間管理で試験形式になれる
初めのうちは時間を気にすることなく、妥協せずに論理的な思考を深めるような練習が効果的です。例えば、「想定した疾患に対してなぜその質問が有用なのか」、「どんな症状を想定して診察を行うのか」、「鑑別疾患のうち除外できるものはなぜ除外できるのか」のように根拠を持って考える練習をまずは徹底的にやりましょう。
論理的思考に慣れたら次は時間を意識して瞬発力を鍛えるような練習も行なっていきましょう。上述の通りですが、問診+診察で12分とかなり時間は限られています。重要度の高いものを取捨選択できるようになっておく必要もあります。
まとめ
Post-CC OSCEは、あなたが初期研修医として安全に診療を行えるかどうかを評価する、卒業直前の重要な試験です。単なる手技の暗記ではなく、限られた時間内で問診・診察・臨床推論を行い、診断の根拠を説明する力が求められます。
不合格になると卒業や国家試験に影響するため、できるだけ本試験で一発合格を目指すことが大切です。まずは基本手技を正確に身につけ、それを応用できるようロールプレイで臨機応変な対応力を鍛えましょう。
時間を意識した練習も忘れずに。本番で落ち着いて実力を発揮できるよう、早めの準備を始めてください。
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