海外大医学部進学についてメリット・デメリット・卒後の進路まで解説| 医師国家試験予備校MEDICINE

更新日:2025年7月27日
将来医師として働くことを目指す場合、ほとんどの人にとって第一の選択肢は日本にある大学の医学部に入学することになります。しかし、それ以外にも海外大学の医学部へ進学するという選択も可能です。
この記事では、海外大医学部進学について、そのメリット・デメリットや卒後の進路まで詳しく解説していきます。
また、あらかじめご了承いただきたいのですが、ひとくちに海外大医学部といっても国、大学によって事情は大きく異なります。以下の記事で述べる内容は、必ずしもすべての国のすべての大学に当てはまるわけではないということをお断りさせていただきます。
目次
海外の医学部に進学するという選択肢

海外の医学部は、入試システム、大学生活、卒後の進路などの面において日本の医学部とは大きく異なります。
日本の医学部への入学を本気で目指しているが、入試の難易度が高くなかなか難しい、学費が高く6年間通うのは現実的ではない、というような方も海外医学部への進学を視野に入れれば医師への道が開ける可能性もあります。
また、将来自身が医師として希望する進路次第では、日本よりも海外の医学部を卒業した方が有利という場合もあります。
近年では、厚生労働省が認めた大学の医学部もしくは医学課程を卒業していれば、日本の医師国家試験の受験資格を自動的に得られるということもあり、海外への進学率は上昇傾向にあります。昔に比べればかなり現実的な選択肢になりつつある、海外大医学部への進学を検討することも十分に意味があると考えられます。
海外大医学部のメリット

ここでは、海外大医学部に進学した場合得られる可能性のあるメリットを3つ紹介します。学費や入試制度、将来のキャリアの広がりなど、日本の医学部とは異なる魅力が存在します。海外での学びを視野に入れている方にとって、有益な情報となるはずです。
学費が日本よりも安い
日本の医学部に通う場合、特に私立の医学部に通う場合には一般的に学費がかなり高額になります。
特に私立の医学部に通う場合には学費だけでも6年間合計で平均3000万円以上、高い大学では5000万円近くすることもあります。また、学費が安い大学はその分、受験生の人気が集中しやすく入試の難易度も高くなりやすいです。
国立の医学部の場合には、6年間合計で350万程度と桁違いに安くなりますが、こちらはさらに人気が集中しやすく、一般的に私立の医学部よりも入試難易度が高くなる傾向にあります。
一方、東欧や中国など一部地域の大学では、6年間の学費が合計で500万〜1000万円程度、生活費と合わせても6年間の費用が2000万円弱と日本の私立医学部よりも安い場合があります。学力的に、学費が安い日本の医学部への入学が現実的ではないという場合には、海外に視野を広げてみてはいかがでしょうか。
入試の難易度が比較的低い
国によっては日本の医学部に入学するよりも、入試の難易度が低いという場合があります。
日本では一般的に、数学、英語、理科などの学力試験が課されますが、勉強範囲が膨大である上に医学部自体が人気であるため、入試の難易度は他学部よりも高くなります。
一方、一部の国の大学では日本のような学力試験重視の入試ではなく、人間性や医師として働くことに対するモチベーションなども含めた総合的な審査が採用されています。また、学力試験で科される科目の数も日本よりは少ないことが多いです。医学部の人気が日本ほどは高くなく競争倍率が低いということもあります。
学力に自信がない場合でも、志望動機や人間性を重視する入試制度を活用することで、医学部進学のチャンスを広げることが可能です。
国際的に活躍するチャンスとなる
これは、場合によってはデメリットにもなり得ますが、海外大学で医学を学ぶ場合に用いられる言語は主に英語になります。英語で医学を学ぶとアメリカの医師国家試験的な存在であるUSMLEの合格にかなり有利になる可能性があります。
将来、アメリカで臨床に携わることを考えている、アメリカへの臨床留学を考えているという場合にはUSMLEは必須です。日本の医学部に通いながらUSMLE合格を目指す場合、日本語で医学の勉強をしながら並行してUSMLEの対策を英語で行うことになり、かなりの労力と時間が必要になりますが、海外の医学部に進学する場合にはその負担を大きく軽減できる可能性があります。
また、将来世界を舞台に活躍したいという場合には英語で医療に携わる経験は非常に重要なものになるでしょう。
他にも、ヨーロッパの特定の大学の医学部を卒業することで、留学先の国のみならず欧州18カ国で医師として勤務できる資格を得られるという制度もあります。
海外大医学部のデメリット

前章では海外大医学部のメリットについて述べましたが、当然デメリットも存在します。ここではそれらのデメリットについて詳しく解説します。
日本の医師免許取得が難しい場合がある
特に将来日本で医師として働くことを考えているが、学力的に日本の医学部入学が難しく、海外医学部への進学を検討するという場合には注意が必要です。
日本の医学部の場合には基本的に卒業さえすれば自動的に医師国家試験の受験資格を得ることができますが、海外大医学部の場合には条件が厳しくなります。まず、どこの国の医学部を卒業していても良いわけではなく、WHOが定めるリストの医学部であることが必要になります。(あくまでも必要条件です)
それらの大学医学部を卒業していた場合、厚生労働省の審査を受けたり、国家試験とは別の試験を受ける必要があったりといくつかハードルが残されていることが多いです。
これらの具体的な流れについては、「海外大医学部卒業後の進路」の項目で詳細に説明します。
大学卒業の難易度は比較的高い
海外大医学部のメリットとして、入学の難易度が比較的低い場合があるというものを述べましたが、その分大学卒業のハードルが高く設定されていることが多くあります。
日本の医学部は入試の難易度が高く入り口が狭い分、一旦入学してしまえば卒業するのはそれほど難しくないという方式になっています。(とは言っても、1学年で10人以上の留年者を出すような大学もありますが…)
それに対して、海外大の場合には門戸は広く開放している分、入学後に高度で難易度の高い勉強を求められ、毎年非常に厳しい進級基準をクリアすることが求められるというケースも決して稀ではありません。
「学力的に日本の医学部は難しいから….」、「日本は学費が高いから…」のような理由だけで安直に海外の大学を選んでしまうと、入学後の大学生活で苦しみ、後悔する可能性もあります。入るだけが目標にならないよう、医学の勉強のことも念頭において検討しましょう。
海外での生活のハードル
これは一つ前の「卒業の難易度」というところにも大きく関わりますが、母語でない言語(多くは英語)で新しいことを勉強するということだけでもかなりの負担になります。医学部に進学した場合には、さらに英語で非常に高度な内容を大量に勉強し、進級・卒業基準をクリアしていくことが求められます。
前述の通り、英語での勉強という敷居を乗り越えることができれば大きな武器を得られることは間違い無いですが、そのレベルに到達するのは容易ではありません。
英語圏以外の国の場合、生活のために現地の言語もある程度熟達していることが必要です。本気で海外の医学部を卒業したいと考えるなら、入学前から時間をかけて言語的な準備を整えておかなければならないと言えるでしょう。
また、異国での生活に対するストレス耐性も人によって大きく異なるのも事実です。
進学先として人気な国

ここでは海外大医学部への進学を目指す場合、進学先としてとして人気な国をいくつか紹介します。
- アメリカ
アメリカの大学は先進的な臨床医学だけでなく薬剤開発や基礎研究といった分野にも非常に力を入れているという特徴があります。
医学課程(メディカルスクール)に進むには、アメリカの4年制の大学を卒業し学士を取得している必要があるほか、課外活動や面接を含めて総合的に評価されるので入学難易度も非常に高く、学費も高額です。
その分卒業した際に得られる武器も非常に強力であると言えるでしょう。
- イギリス
イギリスの大学は、医学生のうちから実臨床に触れることを重視したカリキュラムを提供しています。
教育水準が非常に高い国であり、受験の条件として高校の成績が一定の基準以上優秀であることが求められるほか適性試験、面接なども課されます。
イギリスの場合医師国家試験に相当する公的な試験は存在せず、各大学が行う卒業試験合格を以て医師免許取得となるそうです。この医師免許はイギリス国外でも多くの英語圏の国で有効で、活躍の場を広げるチャンスになりうるでしょう。
- ハンガリー
上記二つの国はいわゆる先進国であり、世界トップレベルの医療を学べる分、学費や生活費も日本より高額です。
それに対して、ハンガリー国立大学の医学部は入学難易度が低いこと、学費が6年間で1000万円程度とそこまで高額でないこと、現地での生活費も日本より安いことを理由に近年注目を集め、日本からの進学者も毎年増加しています。
日本にも留学生向けの窓口を構えており、入学のハードルは低めですが、例に漏れず卒業難易度はかなり高いです。日本からハンガリー国立大学医学部に入学した学生のうち半分以上が留年したという話もあるほどです。
- 中国
中国には北京大学をはじめ世界的にも有名な医学部が多く存在しますが、留学生を積極的に受け入れており世界各国からの留学生が集まっている(留学生向けの試験が別途用意されている)、学費が日本の国立大学並みに安い(生活費も日本より安い)という大きなメリットがあります。
しかし、卒業後に実施される中国の医師免許国家試験は合格率が30%程度と非常に難関です。(日本の医師国家試験の合格率は90%程度)
また、仮に日本に帰ってきて医師免許取得を目指す場合でも、中国でのカリキュラムなどに関する審査を受けなければいけないという障壁もあります。
海外大医学部卒業後の進路

海外大医学部卒業後の進路も、日本の医療に貢献する道から、国際的に活躍する道まで様々です。
日本の医師免許を取得する
海外大を卒業後日本で医師として働くためには、日本の医師免許を取得する必要があります。
前述の通りですが、まず国家試験の受験資格を得るためにはWHOが定めるリストの医学部を卒業している必要があります。
それらの医学部を卒業していた場合、当該大学の教育水準やカリキュラムの内容などについて厚生労働省の審査を受けることになります。実際には審査自体はほとんどの人が通過できますが、そのまま国家試験の受験資格を直接得ることはできない場合があります。
例えば、海外の5年制の医学部を卒業していた場合、日本で1年間の実地修練(要するに病院実習)をする必要があります。
また、当該国の医師免許を取得していない場合には国家試験の前に予備試験(不合格だと国家試験に進めない)の受験を課されたりする場合があります。
日本の医師免許を取得することができれば、晴れて医師として日本で働く資格を得ることになります。
そのまま海外で活躍する
日本の医学部では卒業後、臨床の道に進み医師として働く人がほとんどですが、海外の場合、基礎研究や公衆衛生といった臨床以外の道に進む人が多くいるという国もあります。実際、日本の医学部は他の先進国に比べて基礎研究の分野で弱いことが問題視されている側面もあります。
これらの進路を本格的に考えている人の場合には、研究・学習環境が日本よりも充実している海外にそのまま残り、キャリアを形成するという道も十分あり得るでしょう。
また、当該国やその医師免許で勤務が可能な他国で医師としての経験を積むという道も海外大卒業者ならではといえます。
他にも、かなりの狭き門ではありますが英語で医学を学んだ経験を活かしてWHOなどの国際機関で世界の医療水準向上に貢献するという道もあります。
まとめ
この記事では海外大医学部についてメリット・デメリットや卒後の進路について解説してきました。
海外の医学部は、日本に比べて学費や入試の難易度が低い場合があり、国際的に活躍するチャンスも広がります。一方で、卒業や現地での生活、日本の医師免許取得には高いハードルが存在することも事実です。
進学先によって制度や条件は大きく異なります。自分の描く将来像に応じて十分な情報収集と対策をするようにしましょう。
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