医学生の勉強を効率化できるノートの作り方について徹底解説| 医師国家試験予備校MEDICINE

医学生の勉強を効率化できるノートの作り方について徹底解説| 医師国家試験予備校MEDICINE

医学生は医学部在籍6年間の間に大学の定期試験やCBT、国家試験といった数多くの試験を受けることになります。

多くの医学生の方は医学部受験時に相当な量の勉強をした経験があり、長時間机に向かうのも全く苦ではないという人も珍しくないと思います。

しかし、医学部における試験対策の勉強は膨大な暗記量を要求されており、思考力を問われる受験勉強とは性質の異なるものです。受験勉強とは違う新たに自分なりのやり方を探して身につけることが効率よく試験を突破することへの鍵となります。

この記事では、医学部における勉強法を見つけるヒントの一つとして、筆者が試験対策をする際に作っていたノートについて詳しく解説していきます。ぜひご自身の試験対策、勉強に役立てて下さい。


佐々木京聖

医師国家試験予備校MEDICINE 塾長・医師 佐々木京聖

医師。東京大学医学部卒。医学生の個別指導歴9年。大手医師国家試験予備校で、在学時より医学生の個別指導の経験を積む。基礎医学からCBT・国試対策まで幅広く手掛ける。その後、医師国家試験予備校MEDICINEを設立し現在に至る。
学生時代には、塾講師として延べ100人以上の大学受験生(主に医学部・東大志望者)も指導。東大理三をはじめ、医学部を中心に多数の合格実績。自身の勉強法をまとめた書籍に、学生時代の書籍『現役東大生が教える超コスパ勉強法』(彩図社)がある。


医学生のノートの作り方

医学生のノートの作り方

まずはノートを取る媒体についてです。

紙のノートを作る方法とipadなどのタブレット端末を使ってノートを作る方法の二つが主流かと思います。

ここではそれぞれのメリット・デメリットについて解説していきます。

紙のノートを作る

紙のノートに手書きで勉強ノートを作る方法です。筆者は医学の勉強をする際、紙のノートを使っていました。

なんとなく実物の紙と自分がペンで書いた文字の方が内容が頭に入ってきやすいという実感があったこと、iPadを用いるとどうしても他のアプリを開いたりと勉強に集中できない原因になってしまうことなどが理由です。

ノートを取る際だけでなく論文を読む時なども同じですが、画面を通して情報を理解しようとするとイマイチ頭が回らないと感じる人は紙のノートを使ってみると世界が変わるかもしれません。

紙のノートを使うことによるデメリットとしては、作成後の編集・加筆がしづらいということが挙げられます。最初にある程度余白を残して書き込んでおけば、後から追加することはできますが量に限りがありますし、ページ単位で途中に挿入するのも不可能です。ただ、このデメリットはノートではなく、ルーズリーフとそれをまとめるバインダーを使えばある程度解消できるでしょう。

もう一つのデメリットは、図や写真を挿入しにくいという点です。iPadではスクリーンショットなどの機能を使って簡単にネット上の写真などを貼り付けすることができますが、紙の場合にはかなりやりづらくなってしまいます。ただ、筆者は自分の手で図や表を書くことも暗記の一環と割り切って、下手ながら手書きの図を大量に作っていました。

Goodnotesを活用する

続いてタブレット端末を用いてノートを作る方法です。

筆者の周りではGoodnotesというノート作成アプリと、Apple Pencilのようなある程度の性能があるタッチペンを使ってノートを作成していた人が多かったように思います。

メリット、デメリットについてはおおよそ上記の紙ノートの裏返しです。

最近では電子媒体の教科書や参考資料も増えてきていますので、医学の勉強関連の資料をノートも含め全て一つのタブレットで管理できるというのも大きなメリットでしょう。

ノートを含めて電子媒体で学習の管理をするならタブレットのレンタルが便利です。

勉強ノート作りのステップ

勉強ノート作りのステップ

ここからは筆者の経験をもとに、勉強を効率化できるノートを作る手順を3つに分けて解説していきます。

主に定期試験対策むけのノートについての解説ですが、もちろんCBTや国家試験の対策に応用できる部分も多くありますので参考にしてみてください。

レジュメにメモを取る

医学部の定期試験ではその授業を担当する先生が授業中に話した内容、特に強調して話した内容から多く出題される傾向があります。

また、授業で配布されるレジュメには、その先生が授業をするにあたり「重要である」もしくは「学生に覚えて帰ってもらいたい」と判断した内容が多く詰まっています。定期試験の勉強を効率よく済ます第一歩は授業をよく聞き、試験に出題されそうな内容をしっかりと押さえておくことです。

そのため、授業中はレジュメをベースに授業の内容を追いつつ、先生が口頭で補足した内容を追加でメモしたり、強調して話した内容にマーカーを引いておいたりするのが良いでしょう。

レジュメそのものや、自分でメモした内容が後々勉強ノートを作るときに非常に役立ちます。

後述しますが、一から全ての内容を網羅したいわゆる「まとめノート」のようなものを作ろうとするのは、医学部における定期試験の頻度や一回の試験範囲を考えるとハードルが非常に高く、また効率的とは言えません。

まずは授業やレジュメという与えられた教材を活用しつつ、内容を理解しておくのが勉強の第一歩です。

過去問を2〜3年分解く

試験が近づいてきたら、ノートを作る前にまずは過去問に目を通すようにしましょう。

過去問も授業と同じく、担当の先生が学生に「覚えてもらいたい」と考えている事項の集まりです。そのため、担当の先生が変わったりしない限り、毎年似たような題材の問題が出題される傾向にあるかと思います。

また、授業をしっかり理解しレジュメに目を通していれば、少なくとも過去問を見たときに「なんの話をしているのか全くわからない」という状態にはならないはずです。

正答率が低くても構いませんので、過去問を2〜3年分解いてみることにより

・どのような題材が扱われやすいのか

・どのような問題が「紛らわしい」のか

の2点、言い換えると「どの部分に力を入れて学習するべきなのか」が明確になります。

ノートを自作する

過去問を解くことによって明らかになった「力を入れて学習するべきポイント」に絞って、自分なりにノートを作るのが次のステップです。

過去問はその試験において重要と思われるポイントを押さえるのには役立ちますが、常に同じ問題が出題され、同じ問われ方をするとは限りません。

過去問の正解を丸暗記するにとどまらず、問われ方が変わっても対応できるようにするために、周辺知識をまとめたり、紛らわしいポイントを整理したりするためにノートを活用しましょう。

この記事の後半では、実際に筆者がノートを作る際心がけていたポイントについて解説していきます。

勉強ノートを作る際のポイント

勉強ノートを作る際のポイント

ここまでは試験勉強全体の流れを解説してきました。

ここからは、勉強ノートを作る際に気をつけるポイントについて詳しくみていきます。

全てを網羅しようとしない

あくまでも筆者の考えではありますが、ノートはそれを見れば全てが書いてある「辞書」や「教科書」のようなものではなく、勉強を進めていく中で覚えにくいと感じた点を自分が覚えやすいフォーマットでまとめるものです。

先述の通りですが、医学部では1週間で複数の試験をこなさなければいけないスケジュールが組まれていることも珍しくありません。

また、一つ一つの試験範囲も全て網羅しようとすればかなりの量になるはずです。

教科書やレジュメ、予備校の参考資料といった既製品の教材を活用せず、それらの膨大な内容を一からまとめようとするのは得策とは言えません。

繰り返しになりますが、定期試験の過去問やCBT対策用の問題集はよく問われる(=重要である)内容が、形を変えて繰り返し出題されるようになっています。それらを(選択肢の番号の丸暗記などにならずに)しっかり2〜3周勉強すれば必要とされる知識の大部分は頭に入ってくるはずです。

そのような勉強をしていく中で、「紛らわしくてよく間違える」「複雑なので問われ方が変わったときに対応できるか不安」と感じた内容を、自分なりに覚えやすい形でまとめるのが勉強ノートであると考えましょう。

自分の言葉、図、表を使ってまとめる

これもあくまでも筆者の考えではありますが、勉強ノートを作るという行為そのものが、頭の中を整理し記憶を定着させる役割を担っています。

つまり、ノートを作った上でそれを使って知識をインプットしていくのではなく、ノートを作るという行為自体が知識のアウトプットになっているということです。

その意味で自分なりの表現方法(言葉、図表)で知識を整理するというのはとても重要です。教科書の説明や図の写経ノートになってはいけないということです。

実際、筆者は勉強ノートを作る際、まずは教科書などを見て完全に知識をインプットした後、頭の中でインプットした情報を整理し、整理したフォーマットに沿って教科書を見ずにノートに書き起こして記憶を定着させるという方法をとっていました。

慣れるまでは時間がかかりますが、試験のたびに同じプロセスを踏んでノートを作っていくうちに必ず「情報を整理する能力」が身に付いてきます。そうすれば非常に効率的に試験勉強を進められるようになるでしょう。

科目ごとに分けてアップデートしていく

ノートは可能であれば科目ごとにある程度ページを分けて作るようにしましょう。

一度作ったノートはその後も知識を付け足しつつ国家試験対策まで使うことができます。

多くの場合、定期試験対策では「循環器内科」「整形外科」のように科目ごとに新しい知識をインプットしていくところから始まります。

その後の、CBTや医師国家試験といった大きな試験では、それまで学んできた知識をベースに全範囲に跨った網羅的な勉強をすることになります。

定期試験を通じて全貌を把握した状態で、CBT・国家試験の対策を進めていくと、科目ごとバラバラに勉強していたときには知らなかった・気づかなかった事項が出てくるはずです。

具体的には

・一つの薬が全く異なる病気の治療に使われている

・ある遺伝子異常がタンパク異常を介して一見無関係の複数の臓器に異常を引き起こす

などです。

医学部在籍時の勉強ノートは将来医師として働くまでの橋渡しになっていると言っても過言ではありません。

分野横断的なアップデートを勉強ノートに加えていくことが最終的に必要な知識を定着させたり、疾患への理解を深めることにつながります。

ノートの例

紙のノートの場合

紙ノート

Goodnotesの場合

まとめ

この記事では筆者の体験をもとに医学部における勉強ノートの作り方、活用法について解説してきました。

医学部での試験対策は、膨大な暗記量と短い準備期間の中で効率よく学習する工夫が求められます。

授業やレジュメを基盤にし、過去問を活用して出題傾向を掴み、そこから自分なりに整理したノートを作ることで知識が確実に定着していきます。

ノートはすべてを網羅するものではなく、自分が苦手と感じる部分や紛らわしい内容をまとめる“学びの整理ツール”と考えるとよいでしょう。

自分に合った方法で継続的にアップデートしていけば、定期試験のみならずCBTや国家試験にもつながる強力な武器になります。