医学部卒業後の流れは? 臨床以外の進路や多彩な就職先を医師が解説 | 医師国家試験予備校MEDICINE

更新日:2025年6月11日
医学部を卒業すると多くの人が臨床医を目指しますが、近年ではその枠にとらわれず多様なキャリアを歩む医師も増えています。そこで、本記事では、初期研修の流れをはじめ、研究職、企業勤務、美容医療、行政、起業など臨床以外の進路も含めて、現役の医師が詳しく解説します。
この記事を読めば、臨床医として以外にも医師としての専門性を生かすことができることがわかります。医師としての人生の選択肢が増えること間違いなしですので、ぜひ最後までお読みください!

医師国家試験予備校MEDICINE 塾長・医師 佐々木京聖
医師。東京大学医学部卒。医学生の個別指導歴9年。大手医師国家試験予備校で、在学時より医学生の個別指導の経験を積む。基礎医学からCBT・国試対策まで幅広く手掛ける。その後、医師国家試験予備校MEDICINEを設立し現在に至る。
学生時代には、塾講師として延べ100人以上の大学受験生(主に医学部・東大志望者)も指導。東大理三をはじめ、医学部を中心に多数の合格実績。自身の勉強法をまとめた書籍に、学生時代の書籍『現役東大生が教える超コスパ勉強法』(彩図社)がある。
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目次
医学部卒業後、大半の人は臨床医に進む

医学部を卒業した後、医学生はどのような進路に進むのでしょうか。多くの医学生は初期研修、専門研修というキャリアを歩むことになります。そこでまずは、医師のキャリアとして一般的な以下のキャリアについて順番に解説していきます。
・初期研修
・後期研修
・専門医取得後
初期研修
医学部を卒業した後、医師は初期研修を経て臨床医としてのキャリアをスタートさせます。この初期研修は通常2年間で構成されており、さまざまな診療科を回ることで幅広い医療知識と技術を習得することが目的です。また、この初期研修を修了することで保険診療に携わる資格を得ることになります。初期研修のプログラムは病院によって少しずつ異なりますが、基本的に内科外科、産婦人科、小児科、救急科など全ての科を回った上で、自分の希望する診療科でさらに研修を行うことができるのが一般的です。
初期研修の期間中は、指導医のもとで実践的なスキルを磨くと同時に、医療チームの一員としての役割を理解することが求められます。学生時代どの診療科に進むかはっきりとは決まっていなかった人も、この初期研修の期間に自分の進路を決めることになります。初期研修を終えた医師は、次のステップとして後期研修に進むことが一般的です。
後期研修(専攻医)
医学部を卒業し初期研修を終えた医師は、次のステップとして後期研修に進むことが一般的です。後期研修では自分が希望する診療科を一つ選び、その科の専門医資格を取得することを目標として研修を積んでいく事になります。後期研修の期間は3〜5年間で、診療科ごとに異なっています。
後期研修中の医師は、希望する診療科の専門的な知識、技術も含め初期研修時よりも高度な内容を学んでいく事になります。例えば外科を専攻する後期研修医であれば、手術に助手として入る回数も大幅に増え、場合によっては自身で手術を執刀する経験を積むようにもなります。「主治医」としての診療にあたるようになる点も初期研修医との大きな違いです。
また、後期研修からいわゆる「アルバイト」が可能になります。アルバイトとは、後期研修を行う病院とは別の病院(外勤)で当直などの業務に週1〜2回程度携わることをさしています。
後期研修を経て専門医資格を取得した医師は、勤務医として市中病院、大学病院でのキャリアを続けるか、開業医として独立する道を選ぶことができます。
専門医取得後
専門医を取得した後の進路は大きく二つに分かれます。一つは勤務医として病院でのキャリアを続ける道です。もう一つは開業医になる選択肢です。それぞれのキャリアについて詳しく見ていきましょう。
勤務医を続ける
専門医を取得した後、多くの医師は一旦は勤務医としてのキャリアを選択します。勤務医は、市中病院、大学病院など比較的大規模な病院で患者の診療・治療を行い、医療チームの一員として働く役割を担います。大規模な病院で勤務することのメリットは、なんといっても症例数が豊富であることでしょう。患者数が比較的多い一般的な病気から、稀な病気まで多様な症例を経験することが可能で、医師としての成長に繋がりやすいと言えます。勤務医としてのキャリアを積むに従い、病院内での役割もだんだん変化していきます。初めは、所属する診療科の疾患を幅広く担当し知見を深めていくことが求められますが、やがて特定の疾患、手技のスペシャリストになるなどさらに専門性の高い診療を行うようになるのが一般的です。(例えば、消化器外科医としてキャリアをスタートした医師が、消化器外科の中でも大腸外科という専門に進み、さらにロボットを用いた大腸癌の手術を極めていくという具合です。)
また、勤務医は所属する病院で診療を行う以外にも様々な業務をこなします。例えば、上で述べたような初期研修医、専攻医を指導したり、国内外の学会に参加して発表したり、医学研究を並行して行ったりします。
開業医になる
開業医としての道を選ぶ医師は、勤務医として臨床経験を積んだ後に独立して自らの診療所を開設することが一般的です。開業医になることで、患者との関係をより深めることができ、地域医療に貢献する機会も増えます。また、診療内容や診療時間を自分で決める自由度があるため、ライフスタイルに合わせた働き方が可能です。
ただし、開業には経営や運営に関する知識も必要です。医療だけでなく、経営戦略やマーケティング、スタッフの管理など、多岐にわたるスキルが求められます。一般的には開業医の方が勤務医よりも年収が高いと言われています。
医学部卒業後、医師以外の進路は?

医学部を卒業した後、臨床医としての道を選ぶことが一般的ですが、近年では医師以外の進路を選ぶ人も増えています。医学部を卒業後初期研修に進まずに企業へ就職したり、起業したりする選択肢です。
そこでここでは、医学部卒業後の医師以外のキャリアについて、以下を順番に見ていきます。
・大学院に進み研究職になる
・医療行政(医系技官になる)
・民間企業で働く
・製薬会社で働く
・国際貢献に携わる
大学院に進み研究職になる
医学部を卒業した後、初期研修を経て臨床医としての道を選ぶ人が多い中で、卒業後直接大学院に進学し研究職を目指す学生もいます。このような進路を選択する学生の数は大学によって大きく異なりますが、研究志向が強い筆者の大学でも1学年110名程度のうち多くて2〜3名です。このような学生は、患者を直接治療する臨床医学ではなく、人体の仕組みや疾患の発生メカニズム、新たな治療薬などを研究する基礎研究と呼ばれる分野に進む事になります。
基礎医学の分野は、細胞内での分子メカニズムを研究する分子生物学、病気の発生メカニズムや性質を探る病理学、免疫系の働きを研究する免疫学、病気の治療薬について研究する薬理学など様々ですが、どれも現在行われている全ての臨床的な医療の根幹を成す非常に重要な学問領域です。
(臨床に携わる)医師を育成するという教育がメインである医学部のカリキュラムの中で、基礎医学の研究者を目指すにはそれなりの覚悟が必要です。筆者の同期にも基礎研究を志している学生は何名かいますが、全員学部時代から研究室に所属して研究活動を行い学会にも参加するなど、学部の勉強は当然のことプラスαで進路を見据えた修学にも力を入れていました。
また、実際には初期研修を修了し、研究をメインとして活動しつつ週に2日程度医師としての仕事を行い生計を立てるという形をとっていることも多いようです。
医療行政(医系技官になる)
医療行政の分野で活躍する医系技官は、医師としての専門知識を活かしながら、国や地方自治体の医療政策を策定・実施する重要な役割を担っています。医系技官になるためには、まず医師免許を取得し、臨床経験を積むことが求められます。その後、国家公務員試験や地方公務員試験を受験し、合格することで医療行政の職に就くことが可能です。
医系技官の役割は実際の医療現場と行政の間の橋渡しをすることにあります。医療の専門的な知識を持った官僚として、例えば感染対策や母子保健といった政策の立案から制定までのプロセスに関わる仕事です。官僚として、海外の大学に留学し公衆衛生学修士などの資格取得を目指せるのも大きなメリットと言って良いでしょう。医療現場と行政の橋渡しをするという性質上、医療現場ならではの事情に精通している必要もあります。そのため、医師としての臨床の経験をしっかりと積んだ上で医系技官になる人も多いようです。
このように、医療行政の道を選ぶことで、医師としての経験を社会全体に還元し、より良い医療環境の構築に貢献することができます。医系技官としてのキャリアは、臨床医とは異なる視点から医療に関わることができるため、興味を持つ医師にとって魅力的な選択肢となるでしょう。
製薬会社で働く

医学部を卒業した医師が進むキャリアの一つに、製薬会社での勤務があります。製薬会社では、医師の専門知識や臨床経験が非常に重宝されるので、やはりそれなりの待遇が期待できるというのは大きなメリットでしょう。製薬会社で働く医師はメディカルドクターと呼ばれており、医学の知識を活かした新薬の開発や、開発された薬の有効性、安全性の検証、臨床試験の実施などが主な業務となっています。
さらに、製薬会社でのキャリアは、医師としての専門性を活かしつつ、ビジネスやマーケティングのスキルを磨くことも可能です。これにより、医療業界全体に対する理解を深めることができ、将来的には経営層への道も開かれるかもしれません。製薬会社でのキャリアは、医師としての新たな挑戦を求める方にとって、非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
国際貢献に携わる
医師としてのキャリアを選ぶ際、国際貢献に興味を持つ人も少なくありません。国際貢献とは、医療を通じて世界の健康問題に取り組む活動を指し、特に発展途上国での医療支援や公衆衛生の向上を目指すものです。有名どころですと、なとこで言うと、WHO、国境なき医師団などでの勤務が挙げられます。
国際貢献の内容は多岐に渡り、手洗いやワクチン、栄養改善と言った公衆衛生の普及活動や、現地医師の教育活動、パンデミックが発生した際の収束に向けた方策の制定、感染症の発生状況の調査といったものがあります。海外で世界中の人々に関わる仕事をするという性質上、医学の知識のほか言語面など要求される能力はより高度になりますが、その分社会への貢献度も非常に高いのは間違いないでしょう。国際貢献は単なる医療行為にとどまらず、教育や啓発活動を通じて地域社会の持続可能な発展にも寄与します。医師としての専門性を活かしながら、世界の健康問題に対する理解を深め、より良い未来を築くための一助となることができるのです。
その他
医学部卒業後の進路は多岐にわたりますが、臨床医や研究職、企業勤務などの一般的な選択肢以外にも、さまざまなキャリアパスが存在します。例えば、医療系のコンサルタントとして働く道もあります。医療機関や製薬会社に対して専門的なアドバイスを提供し、経営や戦略の面で貢献する役割です。また、医療関連のメディアや教育機関での講師として、医療知識を広める活動もあります。さらに医療とは直接関係がない進路を選ぶ学生も一定数います。筆者の在籍する大学では、数年に1人ほど外資系の大手IT企業や証券会社、メガバンクなどに就職する学生がいます。とある病院での実習の際、卒業後アメリカのIT企業に就職し何年か務めたが結局医師をやりたくなり、その企業を退職して外科医をやっているという超人に出会ったこともあります。
まとめ

医学部卒業後の進路は、臨床医としての道が一般的である一方で、近年では多様なキャリアパスが選ばれるようになっています。初期研修や後期研修を経て専門医を取得した後も、勤務医や開業医としての道がある一方で、研究職や医療行政、製薬会社、さらには国際貢献など、医師としての知識やスキルを活かせる場は多岐にわたります。
医師としてのキャリアは、単に患者を診るだけではなく、社会に貢献する多様な方法が存在します。自分の興味や価値観に合った進路を選ぶことで、より充実した職業人生を送ることができるでしょう。今後の医療界は、ますます多様化していくことが予想されるため、柔軟な考え方と新しい挑戦を恐れない姿勢が求められます。医師としてのキャリアを考える際には、臨床以外の選択肢も視野に入れ、自分自身の可能性を広げていくことが重要です。
医師国家試験予備校MEDICINEでは、指導実績豊富な東大卒医師による個別指導を受講することが可能です。
初回面談では、指導実績な豊富な東大卒医師に無料で30分間学習相談をしたり、アドバイスをもらうことができます。
・一年に一回しかない国試で、本当に合格できるのか不安だ
・このままの勉強のやり方で大丈夫なのか、確認しておきたい
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