【医学部生向け】OSCE(オスキー)とは? 試験概要と対策について解説 | 医師国家試験予備校MEDICINE

【医学部生向け】OSCE(オスキー)とは? 試験概要と対策について解説 | 医師国家試験予備校MEDICINE

更新日:2025年6月23日

医学部に入学してから身に付けなくてはならない臨床能力。座学での勉強から病院実習へ進むにあたり、その到達度を図る試験として導入されているのが「OSCE(オスキー)」です。
この記事では、OSCEとは何なのか、試験の目的や評価ポイント、対策方法、先輩からのアドバイスに至るまで徹底解説します。
ポイントを整理して臨めば、自信を持って試験にチャレンジできますよ。

医学生の共用試験OSCEとは?

医学生の共用試験OSCEとは?

OSCEは、医学部の臨床実習に臨む前に必須に課された実技試験です。医学部CBTと同じく、病院実習を行うのに十分な臨床的技能を有しているかどうか評価する目的で学部4年生の時に行われます。

従来の知識中心の筆記試験とは異なり、模擬患者に対しての問診や種々の身体診察を受験生が試験官の前で実演し、試験官が評価する形式の「実技試験」です。

CBT同様学生が病院実習をする資格があるかどうか判断する公的な試験であり、非常に厳格に実施されます。不合格になってしまうと、自動的に留年が確定してしまう一発勝負の試験なのでしっかり準備をして臨みましょう。

OSCEの目的

OSCEの目的は主に以下の2点について、「臨床実習開始前の医学生が臨床実習で医行為を許容できる能力を有することを社会的に保障する」ための試験です。

・臨床技能
・医療者としてのコミュニケーション能力

ここでは、OSCEの試験で評価される点について概説し、試験の具体的な内容などは後述します。

出典(CATO 診療参加型臨床実習に必要とされる技能と態度についての学修・評価項目)

臨床技能

臨床技能

臨床技能は、身体診察や臨床手技の実技試験で評価されます。

・医師の職責を十分に理解した行動をとることができるか

・患者さん中心の医療の実践ができるか

・患者さんおよび医療者にとって、良質で安全な(感染対策を含む)医療を提供できるか

という観点から合否が判定されます。

診察や手技を適切な手順で行うことだけでなく、個々の患者に合わせた精神面での配慮ができているかという点も評価されます。

医療者としてのコミュニケーション能力

医療者としてのコミュニケーション能力

コミュニケーショ能力は主に「医療面接」という項目の試験で評価されます。

・良好な患者・医師関係を築くことができるか

・患者さんを理解するために、適切な情報収集ができるか

・患者教育と治療への動機付けにつなぐことができるか

といった項目が評価基準になっており、全て実臨床で非常に重要な能力であると言えるでしょう。

OSCEの試験概要

OSCE試験の内容は大学によって異なることもあるようですが、おおまかに

・身体診察

・基本的臨床手技

・救急

・医療面接

の4つに大別されます。

なお、ここでは筆者が実際にOSCE試験を受けた経験を交えて、各試験項目の内容と試験当日の流れを説明します。

より詳しい試験の内容や評価基準を確認したいという人はCATOが「診療参加型臨床実習に必要とされる技能と態度についての学修・評価項目」(https://www.cato.or.jp/pdf/hyouka_1.1.pdf)を公表していますので是非こちらを参照してみてください。

身体診察

身体診察の中にはさらに「全身状態の観察とバイタルサイン」「頭頸部」「胸部」「腹部」「神経」のような項目が設定されています。それぞれ、聴診法で血圧を測る、眼瞼結膜の状態を観察する、呼吸音を聞く、などのように受験者が行うべき診察内容がたくさんあり、それらを全て試験当日までにマスターすることが必要です。

覚えるべきことはとても多いですが、一つ一つはどこかで見たり聞いたりしたことがある手技がほとんどだと思います。一度自分でやってみればすぐに身に付くはずですので、範囲の広さに圧倒されずコツコツ計画的に練習しましょう。

基本的臨床手技

基本的臨床手技には採血、導尿(尿道カテーテルの挿入)がありますが、練習用シミュレーターの関係などもあり採血が出題されることがほとんどだと思います。採血もさらに「シリンジを用いた採血」と「翼状針を用いた採血」があり、それぞれ手順が異なりますので別で覚える必要があります。

臨床手技の試験で注意すべきなのはなんといっても、一発で大幅減点を喰らい得るミスが複数あるということでしょう。

例えば、

・アルコールでかぶれる患者さんにアルコール脱脂綿で消毒してしまう(消毒前にかぶれるかどうか確認し配慮する必要がある)

・針を抜く前に駆血帯を外すのを忘れる(駆血帯を巻いたまま針を抜くと血液が勢いよく飛び出る可能性がある)

あたりがやってしまいがちなミスです。

練習ではできていたのに試験本番では緊張で頭が真っ白になってついやってしまったなんてこともそこそこあるようです。体で一連の流れを覚えてしまうくらい何度も繰り返し練習しましょう。

また、試験本番で針を刺す位置が悪く、(シミュレーターの腕から)血が出てこないこともあります。そんな時でも、試験官の指示に従い(通常は「血が出たものとして進めてください」と言われるはずです)、そこから先の手技を行えば大丈夫です。焦らないようにしましょう。

救急

救急

救急の試験は学生が病院実習中、1人でいるときに倒れている患者さんを発見したという想定で行われます。

診察などは必要になった際、事前にある程度復習していくことができますが、救急は一刻を争う場面であり即座に的確な対応をすることが求められます。自分の対応が患者さんの命に関わりうるという自覚を持って勉強しましょう。

覚えるべき事項は、状況設定(意識の有無、心拍呼吸の有無、気道異物の有無、AEDの解析結果など)によって多岐にわたります。

ただ単に全てのパターンを暗記するのではなく、

・脈拍がなく心停止が疑われるときは、大声で助けを呼んだ後すぐに胸骨圧迫を開始する

・気道異物がある時には、可能であれば除去することを目的に、決まった頻度で口腔内を確認する

のように行動の原則となることを頭に入れておくと良いでしょう。

医療面接

医療面接では、実際に模擬患者さんに対して問診を行います。あくまで問診なので、診断をつけたりする必要はありません。

どのような病気の模擬患者さんが来るかは試験本番まで分かりませんが、現在の症状、生活歴、既往歴、アレルギーなど質問するべき事項は決まっています。(決まっているとはいっても数は非常に多いです)当然、本番ではメモなどを見ずに面接する必要がありますので、友達同士で医師役と患者役を交代して練習するなど、経験を積んでいく中で流れを覚えていくことが重要です。

また、面接の内容だけでなく、アイコンタクト、話し方、体の向きなど態度も大事な評価項目です。他の人に客観的に自分の態度を評価してもらうようにしましょう。

試験当日の流れ

試験当日は5〜6人くらいのグループに分かれ会場を回っていく形になります。試験自体は大学で実施されますが、試験項目によって実施される部屋は異なっており、学外の試験監督者の引率で会場感を移動します。試験の各項目が行われる順番はグループによって異なります。

OSCEはCBT同様、非常に厳格に実施されます。決められたもの以外は控え室に置いていくことになり、試験終了まで戻ることができません。また、試験の内容が他グループに漏洩されないよう、移動の待ち時間は監督者立ち会いのもとで壁を向いた椅子に座って過ごしたりもします。グループ内でも会話は厳禁で、基本的にはただ同じタイミングで会場を移動するだけのグループという感じです。

試験は各項目で1人一部屋ずつ割り当てられており、放送などの合図で同時に入室します。入室すると、試験官や模擬患者が座っているほか、救急や採血では試験用にシミュレーターが置いてあります。試験官に名前の確認などをされたのち、実技を始めます。

受験者がやるべきこと(取るべき所見など)は紙に書いて指定してあり、試験中は自由に見ることができます。(ただし、医療面接の質問事項や手技の具体的なやり方などは書いていません)

指定された実技が全て終わっても一旦各々の部屋の中で座って待機します。試験時間終了の放送がかかったら、部屋を出て引率に従って次の会場に移動するという流れです。

医学部のOSCEに向けた対策

OSCEは一発勝負の実技試験であり、普段の筆記試験とは少し違った対策が必要になります。

ここでは、どのような点を意識して対策していけば良いのかをみていきましょう。

大学の授業を大切にする

どの大学でもOSCE本番前に、試験で出題する実技について学ぶ授業があると思います。

この授業では、実際に現場で働く医師(通常は大学病院の先生だと思います)が授業に来て、手技を実演しながらやり方を教えてくれます。逆にこの授業はOSCE前に医師の先生から直接指導してもらうことができる唯一の機会です。授業の後は、教えてもらったことや教科書などを参考に学生同士で練習することがほとんどだと思いますので、手技のポイントや注意すべき点などを聞き逃すことがないよう集中して臨みましょう。

実技もただ単に動きを覚えるのではなく、「なぜそのようなやり方をするべきなのか」という視点を持つと理解が深まり忘れにくくなるはずです。授業を通じてしっかり理解しましょう。

授業で習ったことは、のちに演習するときのために教科書などに書き込んでおくのがおすすめです。

友人と一緒に時間をとって練習する 

実技試験に通るためには、「どんなに本番で緊張していても正しい動きができてしまうくらい何度も練習する」ことがとても重要です。

どの試験項目についても友人同士で繰り返し練習するようにしましょう。患者役と医師役に分かれて練習することで、医師役は当然自分の手技を練習することが可能ですし、患者役も試験官のように相手を評価する視点を持つことで、評価基準の確認や自身の手技の振り返りにつなげることができます。

初めは教科書などを手元に置き、手技が間違っていないか、評価基準になるポイントを押さえられているかという点をお互いに確認しながら練習し、慣れてきたらランダムに問題を出し合って、自力で最初から最後まで澱みなく手技を行えるか確認してみると良いでしょう。

また、項目によっては(特に神経診察など)は試験時間が足りなくなる傾向にあります。時間内に終わらなかった分については当然点数が入らないものと思われますので、練習の時から時間を意識して測りながらやっておくのも大切です。

OSCEを受けた先輩からのアドバイス

何度も書きますが、OSCEは(追試があるとはいえ)落ちたら一発で留年が決まるとても大事な試験です。留年に対するプレッシャーと普段ほとんど無い実技試験という形式のせいで本番はかなり緊張します。また、試験官はただ受験者を見ているだけでなく、席から立って覗き込むようにして確認してきたりもするのでそれも不安を増強させる要因になります。実際、血圧を測る時にマンシェットの圧を緩めるスピード(1秒に2〜3mmHgが正しい)を確認するために後ろに回り込んで目盛を見にきたり、救急で人工呼吸ができているか胸郭の動きを覗き込んできたりとかなり細かく評価されている印象がありました。

確実に本試験で通すために、どんなに些細なことでも曖昧な点、不安要素をなくすように授業や動画教材を用いてしっかり勉強し、それを身体に染み込ませるために繰り返し練習しましょう。「ここ自信がないから出題されたら嫌だな」という気持ちが少しでもあるだけで、本番でのパフォーマンス低下につながり、普段はできたことも試験中に急にできなくなったりします。全ての分野が完璧であると言えるようにするのがとても大切です。

まとめ

OSCEは、医師としての第一歩を踏み出すための重要な関門であり、知識だけでなく、技術・態度・コミュニケーションまで幅広く問われる実技試験です。事前の授業や練習を大切にし、友人と協力しながら繰り返し実践を重ねることが合格への鍵となります。緊張する場面でも落ち着いて普段の力を発揮できるよう、曖昧な点を徹底的に潰して本番に臨みましょう。自信を持って挑戦できるよう、今から着実に準備を進めてください。