医師国家試験の合格率はなぜ高い? 理由と難易度について解説 | 医師国家試験予備校MEDICINE

更新日:2025年6月15日
医師国家試験の合格率が高い理由はなぜなのでしょうか?
医師国家試験は他の難関資格試験と比べると合格率が高いため、簡単であると思われがちです。しかし、試験自体の難易度は高く、膨大な知識と応用力が求められます。しっかりと対策して望まないと不合格になりかねず、浪人して1年を棒に振ってしまう可能性のある大切な試験です。
本記事では、医師国家試験の高い合格率の背景や実際の難易度について詳しく解説します。

医師国家試験予備校MEDICINE 塾長・医師 佐々木京聖
医師。東京大学医学部卒。医学生の個別指導歴9年。大手医師国家試験予備校で、在学時より医学生の個別指導の経験を積む。基礎医学からCBT・国試対策まで幅広く手掛ける。その後、医師国家試験予備校MEDICINEを設立し現在に至る。
学生時代には、塾講師として延べ100人以上の大学受験生(主に医学部・東大志望者)も指導。東大理三をはじめ、医学部を中心に多数の合格実績。自身の勉強法をまとめた書籍に、学生時代の書籍『現役東大生が教える超コスパ勉強法』(彩図社)がある。
目次
医師国家試験の合格率は90%強と非常に高い!

医師国家試験の合格率は、近年90%を超える水準を維持しています。この数字は、公認会計士試験や司法試験など、他の難関国家資格と比較しても非常に高く、多くの人々が医師国家試験は容易であると誤解する要因となっています。
しかし、医師国家試験は、実際は高度な専門知識と応用力が求められるため、決して簡単な試験とは言えません。
合格率が高い背景には、医学生が厳しい入学試験を経て医学部に入学し、医師国家試験受験までに、医学部のリキュラムの中で数々の試験を通過する必要があるからです。
特に4年次には、臨床実習に進むための全国共通試験であるCBT/OSCEがあったり、卒業の際には卒業試験に合格しなければなりません。こうした厳しい試験を経ることで、医師国家試験を受験する時点ですでに一定の学力と適性が確認されているのです。そのため、試験を受ける医学生の多くは、合格の見込みが高いとされています。
医師国家試験の概要
医師国家試験は毎年2月の上旬に、全国の各会場で2日間にかけて行われます。
毎年約1万人の受験生が受験し、合格率は90%を超える試験となっています。
試験範囲は基本的に大学6年間で学んだこと全てを試験範囲として出題され、内科、外科、精神科、産婦人科、小児科など、さまざまな医学分野にわたります。
医師国家試験は現在、マークシート方式の選択問題からなる筆記試験となっています。身体診察の能力やコミュニケーション能力を測定するための実技試験は Post-CC OSCEと呼ばれる形で、各大学の卒業試験の中で実施されています。
こちらの記事では、医師国家試験の概要について、日程と時間割、過去の合格率まで詳しく解説していますので、ぜひ一度参考にすることをお勧めします。
医師国家試験の合格率が高い理由
それでは、医師国家試験の合格率が高い理由はなんでしょうか?
医師国家試験の合格率が高い理由には、以下の5つが考えられます。
理由① 医学部の入学試験で既に選抜されている
理由② 定期試験の難易度が非常に高い
理由③ 医師国家試験に合格する見込みのある医学生しか医学部を卒業できない
理由④ 医師国家試験教育コンテンツが充実している
理由① 医学部の入学試験で既に選抜されている

医師国家試験の合格率が高い理由の一つは、医学部の入学試験で既に厳しい選抜が行われていることです。
日本の医学部は、他の理系学部と比較して競争が激しく、入学試験では高い学力が求められます。人気の医学部では倍率が20倍を超えることもよくあります。医学部受験生は、数学や科学、英語などの科目で優れた成績を収める必要があり、これに合格した者だけが医学部に進学することができます。
医学部に入学する時点ですでに優秀な学生が選ばれているため、医師国家試験合格に必要な基礎学力や勉強習慣が身についていることが多いのです。
理由② 進級試験の難易度が非常に高い
医師国家試験の合格率が高い理由として、定期試験の難易度が非常に高いことも挙げられます。
多くの大学では、授業で習う各科目ごとに、難易度の高い進級試験が実施されます。
低学年では、組織学や解剖学、生理学など、今後学んでいく臨床医学の礎となる基礎医学を履修します。基礎医学は一つ一つの科目の範囲が非常に広く、試験前の付け焼き刃の勉強では刃が立ちません。
また、大学3年・大学4年では、臨床医学の授業に入り、消化器内科、循環器内科など個々の診療科について学んでいきます。臨床科目は各科目が基礎医学ほど試験範囲は広くないものの、診療科の数が非常に多いために試験も多くなり、大学によっては毎週試験があることも珍しくありません。このような試験の勉強を、部活動やアルバイトなど課外活動と両立して行っていく必要があり、忙しい日々の中で継続した努力が必要となります。
進級試験では一般的な教科書に書かれている知識の確認だけでなく、各大学特有のオリジナル問題が出題されることもよくあります。
例えば筆者の大学では、生理学の試験で動物実験での考察を求める問題が出題されたり、、臨床所見から鑑別疾患を複数挙げさせる問題など、大学の講義をしっかり理解していないと解けないような問題が出題されていました。そのため、機械的に暗記するだけでなく、医学への深い理解と応用力も必要になります。
このような厳しい進級試験で鍛えられていることが、医師国家試験の合格率を押し上げている要因となっています。
理由③ 国試に合格見込みのある学生しか医学部を卒業できない

医師国家試験の合格率が高い3つ目の理由として、国試に合格見込みのある学生しか医学部を卒業できないことが挙げられます。
全ての進級試験を突破した先に待ち受けているのが、医学部6年生で受験する卒業試験です。
医学部の卒業試験では、それまで学んできた臨床医学の知識全範囲から出題されることが多いです。特に私立大学では卒業試験が3~4回に分けて行われることが多いです。
卒業試験の難易度は医師国家試験よりも少し難しめの出題が多くなっています。
これは、自大学を卒業して医師国家試験を受験する学生に、国試に落ちてもらわないようにするためです。医師国家試験の合格率は、医学部を受験する大学受験生が受験校を選ぶ際参考にする重要な指標になっています。
当然のことながら、医師国家試験の合格率が高い医学部の方がそうでない医学部よりも倍率が高くなり、優秀な学生に受験してもらえるようになるのです。
そのためには、自大学の国試受験生に何としても合格してもらわなければなりません。
卒業試験は、どの学生が医師国家試験を受験しても大丈夫かを判定する、いわば「スクリーニング試験」としての機能を果たしていると言えるでしょう。
理由④ 医師国家試験教育コンテンツが充実している
最後に医師国家試験の合格率が高い理由として、医師国家試験対策専門のオンライン予備校の存在も非常に大きいです。予備校は、試験の傾向を分析し、最新の過去問を反映したオンライン問題集、映像講座を提供しており、学生が効率的に学習できる環境を整えています。大部分の医学生はどこかしらの予備校の教材を使用しており、国家試験対策にあまり力を入れていない大学の学生にとっては特に重宝する存在となっています。
さらに大学によっては、国家試験対策のための特別講義や勉強会も開催されており、学生同士の情報交換や教員からの直接指導を受ける機会もあります。
このように、医師国家試験に向けた教育コンテンツの充実は、学生が自信を持って試験に臨むための大きな要因となっており、結果として高い合格率につながっているのです。
まとめ 医師国家試験は合格率が高い試験であるが、難易度は低くない
医師国家試験の合格率は90%を超え、多くの人々にとって非常に高い数字に映るかもしれません。しかし、この高い合格率は、決して試験の易しさによるものではありません。実際には、医学生たちは、厳しい選抜過程を経ており、その裏では膨大な努力と入念な準備が行われています。
まず、医学部への入学試験自体が非常に競争が激しく、優秀な学生のみが選ばれます。さらに、医学部在学中には数多くの試験があり、これもまた高い難易度を誇ります。これらの試験をクリアした学生だけが、医師国家試験に挑む資格を得るのです。医学生はすでに厳しい基準をクリアしているため、国家試験の合格率が高くなるのは自然な流れとも言えます。
また、医師国家試験に向けた教育コンテンツも充実しており、学生たちは多様な学習リソースを活用することができます。大学での指導に加え、オンライン予備校の教材など、合格に向けたサポートが整っているため、学生たちは自信を持って試験に臨むことができるのです。