医師国家試験合格への最適な勉強法とスケジュール【東大卒医師が解説!2024年11月更新】

更新日:2024年11月19日

 医師国家試験は医学部生にとって最も重要な試験の一つです。本記事では、試験に向けた効率的な勉強方法やスケジュール管理について詳しく解説します。


佐々木京聖

監修:
医師国家試験予備校MEDICINE 塾長佐々木京聖

医師。東京大学医学部卒。医学生の個別指導歴9年。在学時より医学生の個別指導の経験を積む。基礎医学からCBT・国試対策まで幅広く手掛ける。
学生時代には、塾講師として延べ100人以上の大学受験生(主に医学部・東大志望者)も指導。東大理三をはじめ、医学部を中心に多数の合格実績。自身の勉強法をまとめた書籍に、学生時代の書籍『現役東大生が教える超コスパ勉強法』(彩図社)がある。


勉強を始める時期と初期の準備

 医学生にとって国家試験は最も重要な試験です。この試験をパスするために医学部に入り勉強をしているといっても過言ではありません。ただ、医学生の間に行うことは多くの人にとっては勉強だけではないと思います。勉強以外にも、部活、バイト、課外活動、遊びなどに精を出している方が大部分だと思います。時間がまだある低学年の人も、比較的高学年の人も効率的に国家試験をパスすることを学んでおいて損はないと思うので、この章では以下の3つの点に絞って、効率の良い勉強法を伝授します。

・勉強の開始時期
・必要な教材の選び方
・学習ツールの活用方法

勉強の開始時期

 大学によっては定期試験、進級試験、卒業試験などあると思います。もちろん国家試験の対策を定期試験に合わせて行うことは効率が良いです。しかし中には、国家試験に関係のなさそうな範囲から出題される試験もあるでしょう。

 ここで大事なのは試験の個別の知識そのものよりは、試験対策をしていく中で医学部の試験の対策の仕方を学ぶことです。定期試験も国家試験も膨大な試験範囲から出題されることは共通しており、それは過去問で出た部分が中心的に出ることでしょう。また難問奇問は(少数ですが)出ることでしょう。

 大事なのはまわりが解ける問題を解くことであり、奇問を解答することではありません。定期試験対策をする中でも、例えば友人といっしょに勉強することでどこまではみな押さえているべきで、どこからは解けなくても良い部分なのか、という肌感覚が身につくはずです。国家試験を終えたあと各医学部予備校で振り返りの座談会がありますが、だいたいみなが間違える問題は決まっていて、それを間違えるよりもみなが当たり前に解けており話題にも上がらない問題を間違えている方が精神的にはつらかったですし、臨床的にも後者を正解する方が大事でしょう。

 さて、国家試験に対する勉強の開始時期ですが、私自身や、周りの人の経験から言うと6年の秋以降から初めても全く遅くはないでしょう。しかし不安もあるでしょうし直前の詰め込む能力に自信がなければ前々からやっておくのがよいでしょう。もし読者の方がCBT受験前の3年生以下でしたら、まずすきま時間でCBT対策をするとよいでしょう。CBT対策をしながら国試のQassistなど授業を受けておくと5, 6年の負担が大きく減ると思います。

 読者の方が5年生でしたら実習で回る科に合わせてQassistを見たり、QBを解くとよいでしょう。6年生では以下の章で説明しますが、模試やQBを利用して学校で学ぶ内容に加えて国家試験のヤマを抑える必要があります。

必要な教材の選び方

 もし学校の授業をベースに勉強するのであれば、それに加えて国家試験の過去問問題集を購入するのが良いでしょう。学校の授業をあまり聞いていなかった方は予備校の授業+国家試験の過去問を利用しましょう。動画授業のおすすめはQassistです。数年おきに内容が刷新され、内容も多いですがわかりやすいですし国家試験的には十分の情報量です。最近の医学生の話を聞いていると、Qassist派が多くその他medu4派、テコム(現M3)派がいます。国家試験の情報量は非常に多いので、つまり授業も非常に多く、自分が長年付き合えるキャラの人で納得のいく説明の仕方をしている人の授業を取るとよいでしょう。

その上で問題集ですが、おすすめは同メディックメディア社のQBです。多くの人が使っているという点が大きく、現在の自分の進捗がグラフに表示され、学年全体で自分がどの位置にいるかリアルタイムでわかります。それに加え各問題に正答率が付され、各選択肢をどれくらいの人が選んだかがわかります。国家試験で大事なのは「みなが解ける問題を落とさない」ことですので、理にかなった勉強ができるでしょう。

 デメリットは値段が数万円することで、もし無料のものが良い方はテコムの問トレを利用しましょう。同じく国家試験の過去問を扱っておりさらに解説、他年度の類似問題まで書いてあります。質は高く、私の周りで問題集は問トレ、という方も一定数いたので、特にCBTで高得点を取り学習に余裕がある方は問トレを使うとお金の節約になるでしょう。

 医師国家試験予備校の選び方についてはこちらの記事で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください!

学習ツールの活用方法

 最もスタンダードな勉強法は学校or医学部予備校の授業を聞き、該当する問題を解くことでしょう。おすすめは、まずQassistをCBTまでにすべて見ておき、5-6年生のときにQBを解くことです。授業を先に聞いておくメリットはいくつかあり、まずその科のすべての内容を見ておくことで全体像がつかめるということ、また、重要な知識を示してくれるだけではなく覚えやすく説明してくれる(表を用いたり、体系的な説明をするなど、語呂合わせなど)ので、QBを解いていても膨大な範囲を前に迷子になることなく、消化しきれることです。

医学部6年生の具体的な勉強スケジュール

 医学部6年生は病院実習、定期試験、マッチング、病院見学、課外活動、人によっては最後の部活などイベントが目白押しです。国家試験だけにも時間が割けない一方で、できるだけ安心して国家試験を迎えられるように、時期ごとに勉強計画を練ることは大切です。

・4-7月の勉強計画
・8-11月の勉強計画
・12-2月の勉強計画
に分けて説明します。

4月から7月の勉強計画

 4月から7月は病院見学や実習、マッチングなどで忙しいでしょう。もちろんこの時期に勉強せずに国家試験を乗り越えた人は周りにいましたが、精神衛生上この時期にある程度知識をつけておくことは良いことでしょう。

特にメジャー分野(内科、外科)はQBの1周目問題(他の問題集ですと、対応する国家試験の過去問)を終わらせておくのが良いペースでしょう。マッチングでテストを課す病院ではほぼすべてが国試のメジャー分野からの出題、もしくはそれに類する問題が出題されるのでそれに合わせて勉強しましょう。このような病院を受けない場合にも見学でメジャー分野の知識が問われることもありますし、周りと同じペースで勉強するという意味では自身で問題集を進めておくことは意義があると思います。

 自分の位置を確認する意味合いでも、この時期に1つ以上模試を受験してみましょう。今後勉強のペースを決めるうえで良い材料になるでしょう。

 QBの使い方については、こちらの記事で詳しく解説していますのでd、ぜひ参考にしてください!

8月から11月の勉強計画

 8月以降はメジャー分野の細かい知識とマイナー分野の全体像を掴みましょう。大学によっては定期試験、実習などでこれより前にマイナー分野の知識を身に着けておく必要があるかもしれません。Qassistの授業を見返し、全体像を掴んでいくのが良いでしょう。模試をこの時期に受けるのも効果的です。

 マイナー科目の勉強方法については、こちらの記事で詳しく解説していますのでd、ぜひ参考にしてください!

12月から2月の国試直前対策

 12月以降は国試直前期です。最も大事なことは他の人が解ける問題を解けることで、その意味では5年分の過去問を確実に完璧にしましょう。(3-5年分の過去問はどの受験生も解いてきます)

 また、直前期の模試もしっかり受けて復習しておきましょう。この時期の模試の内容が国試に出やすいだけでなく、基本的なものは特に皆学んでくるはずなので、差をつけられないようにしましょう。

模試の役割と活用法

 国家試験の対策を効率的に行う上で模試は有効な手段になるでしょう。以下ではその理由と模試の活用方法を3つの観点から説明します。

・模試を受ける目的
・模試の復習方法
・合格に向けた最終調整

模試を受ける目的

 上述しましたが、定期的に模試を受験することは自分の現在の位置を知るため、他の受験生が現在どの程度の正答率か知るためにも重要です。私の学校は卒業試験がなく、比較的国家試験対策が遅いとされている学校ですが、自分もその傾向に漏れず特にマイナー分野の対策はかなり遅れておりました。ただ普段の学内の実習でそれを実感することなく過ごしていましたが、夏〜秋の模試で他の学校の生徒の生徒率を知り、自分が遅れていることを実感し、そこから勉強に熱が入ったという経緯があります。自分の弱点分野を知るだけでなくモチベーターにもなってくれるため、模試はできるだけ受けましょう。

模試の復習方法

 とはいえ模試を受けっぱなしではもったいないでしょう。というのも、特に直前期では、大部分の受験生が模試を受け、かつ復習をするので出題される内容は本番で解けなくてはいけない問題であることが多いです。

 各社の模試の復習方法としては、それぞれの解説の特徴を活かすのが良いでしょう。テコム模試では、模試の解説にそれに類似する国試の問題が示されています。釈然としない問題、問題で求められているレベルが重箱の隅をつつくようなものなのかわからないときは対応する国家試験の問題を解くとよいでしょう。メディックメディア社の模試の解説には動画がついているのでそちらも合わせて確認するのがおすすめです。

 各問題に対しどの程度の知識が求められているのか、国家試験レベルを逸脱していないかなどを解説してくれるので、効率よく復習ができます。

 模試の復習は医学的知識の増強にとどまりません。試験を受ける際のテクニック的な話をすると、模試はこれとない本番のシュミレーターになるといえます。できるだけ本番と同じ時間割(や環境)で直前期に受けることで復習の際に自分の弱点やクセがより見えてくるでしょう。

 私の場合は、医師国家試験の受験生時代、模試を何度も受験し、以下のようなことに気がつきました。

①自信のない問題はその場で考えるよりも見直しで考え直したほうが正答率が高いこと、さらには自分の場合自信のない問題以外でも見直したほうが結果的に正答率があがること
②1日目を終えたあと疲れからダラダラ夜ふかしをしてしまい、2日目集中力を切らし最初のブロックのケアレスミスが増えること
③2つ選ぶ問題で1つしか選ばない、というようなケアレスミスが多いこと
④1日目の問題を持ち帰ったあとの自宅での復習を軽くするというルーチーンを確立したほうがよいこと(これは各人の好みで分かれますが)
⑤国家試験あるあるの禁忌をケアすること(妊婦に対する生ワクチン、CT、腎障害に対する造影剤など)
⑥その他多少の読み間違えなど 

 これらをケアできるようになったのも模試を復習したおかげ、ひいては本番と似た環境で模試を受験したおかげなので、模試は大事にしましょう。

 本番と同じ環境でいえば、私は直前期の模試は本番の会場を本番と同じ時間に下見し、その近くのカフェなどで本番と同じ時間に最初のブロックだけ解く、ということもしていました。

合格に向けた最終調整

 直前期の模試はできるだけ受けるのが良いことは先の章でも示しました。直前期は、模試の成績をポジティブに受け止め、本番によいメンタルで臨めるような材料にしましょう。本番は、(必修の8割ボーダーなどを除き)偏差値35あれば受かる試験と言われています。模試をそもそも受けていない(受ける気がない)人のことも考えると本番での偏差値は模試より少し上がることが予想されます。慢心は禁物ですが、模試をポジティブな材料にしましょう。

知識を定着させるための学習テクニック

 医学部生は皆入試を突破したこともあり、学習においてアドバイスをすることは比較的少ないです。ただ、国家試験は入試から6年も経った後にあるテストで、さらに医学生は受験生と異なり様々な活動をしていることでしょう。さらに、医学生の学習ツールはデジタルのものも多く、受験生時代の紙媒体とは異なることが多いです。ここでは、釈迦に説法ながら学習の基本について触れながら、できるだけ短時間の対策で効率よく国家試験の膨大な範囲を学ぶことのできる方法論について、以下の3点に触れながら解説していきます。

・インプットとアウトプットのバランス
・まとめノートの作り方
・繰り返し学習の重要性

インプットとアウトプットのバランス

 国家試験の範囲、ひいては医学部で学ぶ内容の範囲は膨大です。意味のないインプットは完全な時間の無駄になりますし、効果的なインプットは多くの人には重要でしょう。国家試験、定期試験のような範囲が膨大で過去問が存在するタイプの試験は概してアウトプットの方が重要な傾向にあるのは医学生として過ごされているとわかるでしょう。

 では、アウトプットの準備のためのインプットとは何が重要でしょうか。最もよいのはQassistのような、全分野をさらうことのできる上にわかりやすい授業をさらっと見ておくことでしょう。その後のアウトプットは国家試験の過去問になります。記憶を定着させるのはあくまでアウトプットで必要となる知識およびその周辺知識で、最初から全部をインプットで理解しようとはしないでください。私は3年生のときにラングマン人体発生学を読み、復習もしなかったため全く知識がつかなかったです。復習(アウトプット)もしない漫然としたインプットは時間の浪費になってしまいます。

暗記カードの作成法

 私がおすすめする暗記方法の1つにフラッシュカードの作成があります。私の周りでも使っている人が多かったのはAnkiというフラッシュカードアプリです。これはスマホ、タブレット、PCに対応した暗記カードでそれぞれのカードを解いたあと解けた自信を4段階で評価します。それに基づいて適切な時間(エビングハウスの忘却曲線に基づいている)を開けてそのカードが再び現れます。デジタルデバイスで使えるので、2つのメリットがあります。まず、スマホで隙間時間に勉強できる点と、他のデジタル書籍、インターネットの画像からコピペをすることで画像豊かなフラッシュカードにできる点です。

 繰り返し学習の重要性

 アウトプットが大事であることは前の章で述べましたが、暗記カード、QBなどで間違えた問題は繰り返し解きましょう。特に5年生などで実習でまわっている科のQBを解いていた場合、6年生の頃にはすべて忘れる、ということがよくあります。自分の記憶に定着しやすい復習スパンを見つけてそのタイミングで復習するのが良いでしょう。

 この際、QBでは自分が過去に選んだ選択肢が履歴に残るので復習の際に参考になります。自分の場合は5年生のときに間違えて選んでいた選択肢と全く同じ選択肢を6年生でも選ぶ、ということがよくあり6年生の前半はそれで愕然とすることが多かった記憶があります。また、QBの進め方ですが、去年の国試に上位で合格した人の同時期の進捗状況がQBではグラフにプロットされますが、「問題数をとにかく進めた人」より「同じ問題数でも正答率が高い人」の方が傾向としては多かった印象です。初見での正答率が高い人もいるでしょうが、復習してQB全体の正答率を上げた人が結果的には高得点で国家試験に合格した可能性はあるといえるでしょう。

重要なポイントの総まとめ

 以上の勉強法とご自身の勉強法を使い直前期にも変わらず勉強を進めて行く中で、直前期ならではの重要なポイントを以下の3点に分けてご説明します。


・試験直前のチェックリスト
・リラックス法とメンタルケア
・合格を勝ち取るための心構え

試験直前のチェックリスト

 試験直前のチェックリストを作成する場合は当日すること、気をつけておくこと、過ごし方などを書くのが良いでしょう。直前期に模試や過去問5年分を解く中で自分が良くしてしまうミスなどがわかってくるので、同じミスを本番ではしないことが大事です。

 近年では合格ボーダーが上がってきているので、このようなつまらないミスを減らす努力も直前期では重要です。前の章でも紹介しましたが、私のチェックリストには、

①1日目は40分で1日目の復習をして22時前にはベッドに入る
②その日の最終ブロックは集中力が切れがちなので特に「2つ選べ」のような文句には印をつけておく
③頻出の禁忌を直前に見直すためにまとめ
④過去問では頻出ではないもののメジャー分野でよく忘れる表や分野のまとめ(消化器、血液のマイナー疾患など)

これらを書いて試験場でMacbookのノートに入れて見ていました。

リラックス法とメンタルケア

 本番は直前期に勉強しているときの環境と異なりますが、できるだけいつも通り受けることが大事です。本番数日前の過ごし方、リラックスの仕方は人によって違うと思うので、あらかじめ決めておくのが良いでしょう。私の場合は過去問を大量に解くのは数日前までにして、残りは強度を減らして簡単な復習をしたりしていました。また、実際の試験日と同じ時間に起きて外出したり、週1回ランニングをしたりするなど直前期の過ごし方を工夫することで本番で良い精神状態を迎えられたと思います。

 試験が始まると予想しない事があるかもしれませんが、適宜メンタルケアをすることが大事です。前もって試験期間中の過ごし方を決めてメンタルを保つようにしましょう。

 私が受験した際はブロック間の休憩で他校の人が答え合わせをし合っていて(それがいつもの過ごし方だと思うので否定はしませんが)さらにその内容が間違っていたのですが自分も自信がなかったのでその間だけはトイレに行くなどして席を外していました。各々メンタルケアのポリシーは定期試験や入試などで培ってきたと思うので、それを信じることが一番だと思います。

合格を勝ち取るための心構え

 国家試験が他の民間試験とやや異なる点は、基本的に合格させる試験であるということです。結局難易度を異常に上げれば医師不足となり、作成者(厚労省)からしても不利益なのは間違いないです。年に数問は難問奇問が出ますが、それらが往々にして不適切問題になっています。皆が解けるような問題をそつなく解くことが重要で、要求されるレベルは高くありません。そのメンタリティは国家試験を受けるうえで大切だと思います。

 医師国家試験予備校MEDICINEでは、合格実績豊富な東大卒講師による無料学習相談を受けることができます。

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このような気持ちをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください!